スケッチブックを持ったまま

ゆっくり ゆっくり あるいてこ

メルゲ期のvault大会まとめ

2013/04/28〜06/17


時は2013年4月28日の第4回下町CSに遡る。

当時の環境は「ビッグマナ」「獰猛ブラスター」「黒緑次元」「黒緑速攻」「赤緑ギフト」「ドロマーイエス」「ドロマーザビミラ」etc…
と今と変わらず多数のデッキがメタゲームに存在する群雄割拠の時代

その中で頭一つ抜けた勢力は「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」やピクシー・ライフを手に入れて強化された「ビッグマナ」であった。
当時の今と比べて数の少なかったCSのうち、3/20の第7回関西CSや3/31の第2回ゆけむりCSでは参加者の半分以上が「ビッグマナ」を握り、そして上位に名を連ねた。
しかし、この第4回下町CSでは下馬評では黒緑速攻だらけと言われ、実際に参加者の5分の1以上が握ったのは黒緑速攻であり、そして優勝もまた黒緑速攻であった。

地域性、地域差という視点、例えば関西ではビッグマナが多く関東では速攻やビートが多いと昔から言われるが、この分布はそれを見事に体現した結果であると言えるだろう。

そんな黒緑速攻だらけと予想された環境のなか、一人のプレイヤー、ガジラビュートはとある地雷デッキを持ち込み、準優勝という好成績を残す。
そのデッキとは、1週間前の4/21に行われた第5回浜松CSでオポ差で惜しくも予選落ちしており、既に公開済みであった物を数枚弄ったもの、それが「メルゲループ」であった。

「アクア・メルゲ」+「盗掘人形モールス」+「疾封怒闘 キューブリック」を使った無限ループギミックは、キューブリック発売直前の公式のデッキ開発部でも紹介されており、それを纏め上げたリストも前述のように下町の1週間前にはガジラビュートが公開していたが、下町の準優勝以降急速に広まりを見せていく事になる。

目次

  • 前期(4/28〜5/6)〜下町準優勝から黒メルゲの登場まで〜

  • 中期(5/7〜5/20)〜メタの台頭からGT使用可能前まで〜

  • 後期(5/21〜6/17)〜GT使用可能後から終焉まで〜

  • 終わりに

  • 閑話〜獰猛ブラスター史〜

  • 前期(4/28〜5/6)〜下町準優勝から黒メルゲの登場まで〜


    vault大会でのメルゲループの普及第一人者としてdeisyuuの名を避けて語ることはできないだろう。
    彼は、4/294/30のvault大会でメルゲループを使い、故バンバンブロ管理人で当時勢いに乗っていたばんばんを両日共に決勝で打ち破り、2連覇を決め、メルゲループがただの地雷でない事を証明してみせた。

    下町でメルゲループの躍進を止め見事に優勝を果たした黒緑速攻は、当初メルゲループの対抗馬と目されたが、メルゲループは墓地を肥やしながらキューブリックによるバウンスで妨害ができる性質上、元々黒緑速攻に高い勝率を出せたのに加え、彼、deisyuuが採用した「シンカイタイフーン」、軽量ブロッカーの存在によってその相性差は決定的なものになる。(4/30 vaul大会 3回戦 5回戦)
    メルゲ期は黒緑速攻が環境に居た5年間の内、数少ない落ち目の時期であった。

    メルゲループはvaultだけでなくCSにおいても、5/3のおやつCS2013 Spring(チーム戦)で優勝と3位、5/5の第一回九州CSで2位、5/6の第8回関西CSで優勝と、戦績を積み上げて行く。
    特に、第8回関西CSで優勝したmuraboの黒メルゲは、純正の物より事故率は上昇したが、ループに入る手段の増加やビートプランの取りやすさから、これ以降メルゲループの主流の型となった。また、第一回九州CSでの優勝の黒獰猛覇の「お清めトラップ」や準優勝のメルゲループの「クラック・クロウラー」は広く採用されることとなる。

    短期間で普及・洗練されたメルゲループは遂に5/6のvault大会において最大勢力を占めるまでとなった。

    中期(5/7〜5/20)〜メタの台頭からGT使用可能前まで〜


    そのメルゲループの躍進に対して、対抗馬として躍り出たのが前環境の最大勢力「ビッグマナ」であった。
    お清めトラップや当時必須パーツとされた「サイバー・N・ワールド」等の墓地リセットカードを無理なく積むことができ、更に黒のカラーリングを付け足すことでハンデスや黒のパワーカードに加え、メルゲメタだけでなく黒緑次元も同時に見れる「希望の親衛隊ファンク」も積むことができた。(5/12 vault大会 優勝 黒獰猛覇) 

    メルゲループが登場するまでは環境の安パイと見られていた黒緑次元は、次元+キルの盤面をキューブリックにより崩されるものの、マナクラやファンクやディアスZ等のメルゲループに刺さるカード(一部では「ローズ・キャッスル」も採用された)を駆使し環境に適応していったが、その数を徐々に減らしていった。(5/8 vault大会 優勝 黒緑次元)

    次元系のもう一つの雄である、ハンデス系統はメルゲループが環境に現れるまでは、フィニッシュはザビミラを頂点とするヴォルグによるLOが主流であったが、メルゲループはクリーチャー比率が高くヴォルグによる山を削る行為は墓地肥しの手助けにしかならないため、メルゲループ相手にはローズや「埋め立てロボ・コンクリオン」を使用してループを防ぎつつ、ハンデスで相手を縛りながら黒緑次元のように打点を次元で生成し殴り切る形がこの時期から主流になっていった。(5/20 vault大会 優勝 ドロマーハンデス)

    しかし、メタを張られようともこの2週間の間にメルゲループがベスト4の内3人を占める事3回、ベスト4の総数でも4分の1以上を占め、環境トップの風格を見せつけた。
    ハンド消費の荒さを補うための「海底鬼面城」を投入した物(5/7 vault大会 優勝 メルゲループ)やミラーでのハンド消費の荒さを咎めたり、差をつけるために「特攻人形ジェニー」や「パクリオ」を採用した黒メルゲ(5/16 vault大会 優勝 黒メルゲ)など結果を残した。

    後期(5/21〜6/17)〜GT使用可能後から終焉まで〜



    「暴走龍 5000GT」が収録されている最強戦略パーフェクト12は5/25発売であるが、vaultでは5/21には大会で使用可能となった。
    GTはメルゲループに対して強烈なメタ性能を持ちながらもその効果上、デッキに組み込みやすく活かしやすいのはメルゲループであり、「超電磁マクスウェルZ」で取りこぼしていたクリーチャートリガーにも強く出れるようになった。またパワーマイナスによるループの直接防止はGTの降臨までは止められないため、メルゲループ対策はローズやファンク等のパワーマイナス系からお清めやコンクリオン等の墓地リセット系に大きく傾くことになった。

    メルゲループミラーにおいてGTの先出しを切り返すことはほぼ不可能であることから、「日曜日よりの使者 メーテル」を採用し墓地を肥やすスピードを上げてGTの早期の投下を狙った赤メルゲが作られ、vault大会(5/27 vault大会 優勝)やCS(6/9 Duel Masters Festival 2013 3位)で結果を残した。前述の墓地リセット系のカードに対してもメーテルは回答になりえた。

    また、GTはメルゲループだけでなくメルゲループの速度やマクスウェルによるトリガー貫通効果によって環境からやや落ち目であった「獰猛ブラスター」にメルゲループやビート・速攻対策として採用され、vaultでもこの時期から数を大きく伸ばすことになる。(5/28 vault大会 優勝 獰猛ブラスター)

    この時期のベスト4総数では僅差でメルゲループが1位を守り切った(刃鬼+ビッグマナでは抜かれている)が、優勝回数では赤緑ギフトが1位を抜き去ることになった。
    赤緑ギフトはメルゲに対して不利がついていたものの、それ以外に対して有利に戦え、メルゲ相手もブロッカー破壊カードや素早く高い打点を絡めることができ、黒緑速攻ほど絶望的ではなかった。(5/24 vault大会 3回戦 決勝

    環境は、ビッグマナ、メルゲループ、赤緑ギフトの三竦みを中心に推移していたが、6/14のデュエルマスターズ公式サイト内において「ホーガン・ブラスター」、「獰猛なる大地」、「アクア・メルゲ」、「カモン・ピッピー」の殿堂、そしてそれの6/22の施行という突然の発表でメルゲ期は終焉を迎えることになった。前回の殿堂からまだ3か月しか経っていなかった。
    メルゲループに対する公式の素早い処置だったのか、次弾の「エピソード3 第1弾 レイジVSゴッド」に収録される「ホーガン・ブラスター」の調整版の「ミステリー・キューブ」との兼ね合いで元々殿堂発表の予定があったのか、知る由もないが、この時期の前の殿堂発表から短期間での次の殿堂発表は来年以降も踏襲されるようになる。

    vaultでは殿堂は即施行されなかったもののメルゲループは急速に数を減らし、環境は次を見据えた物となっていく。
    そして、メルゲ期ラスト、6/17のvault大会を締めくくったのは万年二等兵が握る白黒イエスであった。
    彼にとって初めてのvault大会優勝であり、彼はこの年イエスと共にCSやvaultで結果を残していく事になるが、それはまた別の話しであろう・・・

    終わりに

    バイスDDZ期とは違いリアルタイムでvaultの結果を眺め続け、プレイヤー側として参戦していたこともあり懐かしい反面、もう3年も前のことなのだと思うと驚愕する。

    当時、一強一強と言われることが多かったメルゲループだが、vault大会の結果をまとめてみるとベスト4総数と優勝回数の5分の1しか占めておらず、優勝回数でも刃鬼+ビッグマナと同数であったことがわかる。
    しかし、デッキパワーは頭一つ抜けており、お清めトラップやコンクリオン等のメルゲピンポイントのメタカードを多くのデッキが積まされていたことを思えば、メルゲループも一強と呼ばれるに相応しいデッキであったのだろう。

    最後に前のバイスDDZ期のようにメルゲ期のvaultをまとめたデータを置いておく。興味があれば開いて、当時の大会ヒストリーと共に眺めるといいだろう。

    メルゲ期(13/4/28〜6/17)のvault大会まとめ

    閑話〜獰猛ブラスター史〜

    獰猛ブラスターといえば、2013/3/15の「セブンス・タワー」「ミラクルとミステリーの扉」の殿堂から同年6/22の「ホーガン・ブラスター」「獰猛なる大地」「アクア・メルゲ」「カモン・ピッピー」の殿堂までの間、扉の後継として環境に現れて、次のキューブへと橋渡しをしたデッキタイプであるが、短期間の間に急激な変化を遂げたデッキタイプでもあった。

    獰猛ブラスターという名前のデッキタイプがネット上に残ってる中で最も古いのは、2013年よりも1年前(まだエクスが4枚使えたり紅蓮ゾルゲのギミックが使えたりした頃)の東北強豪プレイヤー、あっつんラスゴの第4回川崎CSのレポ記事である。
    当時のトップメタである紅蓮ゾルゲにはシャーロックに触るカードはなく、第一回DM広島CSで示してるように獰猛によってシャーロックを早期に出すギミックは環境的に強力であり、また、当時エクスが4枚つかえたことから獰猛の種の問題も克服することができた。
    あっつんやラスゴの獰猛ブラスターは、ビートメタや捲れた時リターンが大きいカードの多さからホーガンブラスターを採用したように思えるが、1年後に登場した初期の獰猛ブラスターも前身の扉基盤というよりは、この時と同じように考えからかビッグマナ基盤で組まれることになる。

    扉規制後の初期の獰猛ブラスターを組み上げ、それvault内で広く認知させたプレイヤーとして3人あげることができるだろう。

    一人目は、第4回DM藤枝CC第1回DM江坂CSチーム戦優勝と最近勢いに乗っているプレイヤー「25」である。
    彼は扉規制がまだ決まってない2/9の第2回ありひなCSにおいて獰猛ブラスターを組み上げベスト8に入り込んだ。そして2/11のコロコロフラゲによる殿堂入りカードの判明によって高まることになるが、実際に基盤として広まるのは彼の構築ではなく2人目のプレイヤー、みのむしの物であった。

    二人目は、当時シャチホコで安定した戦績をDMvault内で残し数字ランカーであったみのむしである。
    2/12 vault大会シャチホコでの優勝によりランキング1位の座を仕留めた彼であったが、殿堂後の環境を見据え試作で組んだ獰猛ブラスターで、翌日の2/13 vault大会を優勝し2連覇を果たすことになる。当時のレシピは削除されているがログ解析で39枚は判明している。

    『獰猛ブラスター(39枚)』
    4 x フェアリー・ライフ
    3 x 霞み妖精ジャスミン
    2 x 青銅の鎧
    2 x 爆進イントゥ・ザ・ワイルド
    3 x 獰猛なる大地
    1 x ノーブル・エンフォーサー
    2 x フォーチュン・スロット
    4 x ドンドン吸い込むナウ
    3 x ホーガン・ブラスター
    2 x サイバー・N・ワールド
    2 x ロスト・ソウル
    1 x ボルシャック・スーパーヒーロー
    1 x 永遠のリュウセイ・カイザー
    3 x 勝利宣言 鬼丸「覇」
    1 x 腐敗無頼トリプルマウス
    3 x 偽りの王 ヴィルヘルム
    2 x 偽りの王 モーツァルト

    この基盤は当時のvault大会で広く普及することになった。ちなみに彼の1位はアカレコ生涯ランキング現在3位のdottoがvault大会に参戦したことにより優勝したのにもかかわらず抜かれ一日天下であった。

    三人目は、いち早く新殿堂を取り入れた2/17開催のvault非公式大会ら行杯で優勝したイクスであった。
    ら行杯決勝、両者1-1の場面でトリガーホーブラヴィルでラムダを粉砕と扉と変わらぬ捲りを見せつけた。彼の獰猛ブラスターは2コスブーストを切ってるように、後の高コスト域で固めた獰猛ブラスターの先駆けと言えるだろう。

    そして2/23のvault大会の新殿堂施行により獰猛ブラスターは扉に代わって大きく数を伸ばすことになる。

    しかし、この時点の獰猛ブラスターは致命的な欠陥を抱えていた。
    それはビッグマナ基盤に寄れば寄るほどホーブラが弱く、扉基盤に寄れば寄るほど獰猛が弱くなることであった。
    ビッグマナ基盤ではホーブラで捲れたら強いカードは確かに多いが、同時にブーストや獰猛と種となるクリーチャーも多く、ホーブラはトリガーとしてビート相手に可能性を残せるものの手打ちの場合、扉の時以上に不確実性が高かった。
    対して、扉基盤に寄せると捲れるクリーチャーの質は上げれるが、獰猛の種となるクリーチャーが少なくホーブラで捲れた獰猛がマナのヴィルを出し入れして終わることも多く腐りやすかった。
    この時期開かれた数少ないCSである第1回 ファイヤーボールCSぱなき杯の結果を見れば、獰猛ブラスターの構築がビッグマナと扉の板挟みになっているのがよくわかるだろう。

    この板挟みを解消し獰猛ブラスターを扉の劣化ではなく2年間続くデッキの基盤として用意させたのが、2/27に判明した「希望の絆鬼修羅」とそれを用いてエナジーホール速報管理人ローライが組んだ獰猛ブラスター、通称「GJ部」であった。(原案はDMvault大会三連覇者長谷川健太郎のルーレット以外高コストで固めたデッキタイプであったらしいが)

    初動ブーストをルーレット4までに削減して殺人的にまで高めれたコスト域から繰り出されるGJやホーブラからの捲りによって相手をひき殺す姿はまさに運ゲーの化身。
    獰猛の種不足は鬼修羅の存在によって解消されることになり、それまでの獰猛ブラスターとは違い殺人的にまで高められたコスト域はGJを多用させる鬼修羅とは相性が最高に良くすんなり入ることになった。

    鬼修羅がvault大会で使用可能となった3/15と翌日の3/16にはGJ部がvaultの最大勢力を占め、初陣となった3/15には早速ベスト4入りするなど、新しい時代の到来を予測させたがすぐ沈静化することになる。3/20に獰猛ブラスターがvault大会で優勝するが、それはGJ部基盤ではなく従来のビッグマナ基盤であった。

    一発ネタのまま終わるかと思われたGJ部であったが、3/31、遠く九州、大分の地の、第二回ゆけむりCSにて優勝を果たし一気に主流入りすることになる。細部は違えどデッキの根幹をなす「高コスト域でデッキを固める」は受け継がれておりそれをうまく発展させた構築であった。
    これ以降vault大会の獰猛ブラスターは殆どGJ部基盤で占められることになり、CSにおいてもGJ部基盤の獰猛ブラスターは警戒されることになる。

    そしてメルゲ期、GT発売、ホーブラの殿堂と至るわけだが、ここは本編で取り扱ったので割愛させてもらう。